事務所に所属するかフリーでやるか

私が初めてスカウトされたのは、原宿を歩いていた時に
声をかけられたカットモデルのお仕事でした。
中学生だったこともあり、最初のうちは交通費としてお給料が
もらえるだけで満足でしたが、カタログや看板、雑誌への露出が
増えるにつれ、もっと評価されたいと思うようになりました。

しかし、その評価されたい思いのせいで一つの壁に当たります。
それが「事務所に所属している子」と、当時の私の様に「フリーの子」の扱いの差です。

まず、フリーで働く利点としては、
①お給料が全額自分に入る
②スケジュールや生活スタイルに合わせて自分の都合で仕事を入れられる
③自分の働きが100%その後の仕事を決める(事務所のしがらみがない)
※もちろんデメリットもあります
自由度が高いのが魅力ですが裏を返せば何の後ろ盾もない訳ですから、
守ってくれる人や自分の価値を肯定してくれる人がいません。

その為、よく現場で差別を受けていました。
撮影前、並んでメイクをしてもらっていても、マネージャーを引き連れた
隣に座る某有名事務所の子は「○○ちゃん、お仕事忙しいのに本当肌きれ~い」
「顔小さいね~」「この化粧水よかったら使って~」とチヤホヤ・・・方や
どこの馬の骨かも分からない私には「そんなに緊張しなくても、大して使われ
ないから大丈夫だよ」「中学生なのにアルバイト出来てよかったね」等チクチク・・・。
思春期だったこともあり、扱いの差にビクビクしていたのを覚えています。

その後縁があり、知人が運営する芸能事務所に所属することになり、
「事務所の子」になるだけでこんなにも楽なのか!と驚きました。

事務所に所属するメリットは簡単に言うと
①宣材写真さえ撮ってしまえば、寝て待っていても仕事は来る
②どこに行っても事務所の名前で丁寧に扱ってもらえる
③やったことのない仕事(演技・歌等)もオーディションなしで決まる。
※もちろんデメリットもあります
必ずしもこうという訳ではないですが、同じ様な経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかし、事務所に入り3年目を迎えた時、がっくりとやる気がなくなってしまいました。
その理由は、フリーでやっていた時に比べ、やりがいを感じられなくなっていたからです。
というのも、ある日事務所でレッスンを行っていると、とある若い舞台監督さんが
事務所にやってきました。
社長に呼ばれ、その方と3人で話していると「舞台のW主演の一人をやってほしい」とのこと。
オーディションもなしに、演技レッスンを見たわけでもなく、何故私が?と思いました。
今まで一度も演技の経験がなかったので当然です。
驚きながらも引き受け、まだフワフワしていると、帰り際に社長がその舞台監督さんに
「今回の話、どうもね。また呑みましょうね、監督」と声をかけ、監督さんは困ったように
「今度は皆で、にしましょう」と返していました。

それを聞き、あ~お酒の席で社長が半ば脅しでごり押ししたんだなぁ。
と子供ながらに思ったものです。
その後、最初で最後の主演舞台をきっかけに4年所属した事務所を辞め、
同時に芸能界からも引退しました。

今芸能界への道を進もうとしている方、事務所の後押しをチャンスと捉え、
見事乗っかることが出来るタイプの方には事務所に所属することをおすすめします。
しかし私は、自分が頑張れば評価されて次の仕事が決まり、へまをすれば二度と
呼ばれない実力主義の方が、嘘のない世界で居心地が良かったです。

なので事務所への所属に関しては焦らず、自分はどういうスタンスで仕事をしたいのか、
よく考えて決めるといいと思います。
芸能界は大変な世界ですが、きちんと自分の意志を持つ者にはしっかり道が開くよう
になっていると思います。

キラキラ輝く自分のイメージを忘れずに、頑張って下さい。
皆さんの夢が叶うよう願っております。

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